臨床試験で効果が認められた半枝蓮の抗がん作用

・半枝蓮とは:

半枝蓮 (はんしれん)は学名をScutellaria barbataと言う中国各地や台湾、韓国などに分布するシソ科の植物です。アルカロイドやフラボノイドなどを含み、抗炎症・抗菌・止血・解熱などの効果があり、中国の民間療法として外傷・化膿性疾患・各種感染症やがんなどの治療に使用されています。黄色ブドウ球菌・緑膿菌・赤痢菌・チフス菌など様々な細菌に対して抗菌作用を示し、さらに肺がんや胃がんなど種々のがんに対してある程度の効果があることが報告されています。
漢方治療では、清熱解毒・駆お血・利尿・抗菌・抗がん作用などの効能で利用されています。
半枝蓮
(Scutellaria barbata)

半枝蓮の抗がん作用に関しては、民間療法における臨床経験から得られたものが主体ですが、近年、半枝蓮の抗がん作用に関する基礎研究が発表されており、半枝蓮には、がん細胞の増殖抑制作用、アポトーシス(プログラム細胞死)誘導作用、抗変異原性作用、抗炎症作用、発がん過程を抑制する抗プロモーター作用などが報告されています。
半枝蓮の抗がん作用に関する基礎研究に関してはこちらをご参照下さい


臨床試験で効果が認められた半枝蓮の抗がん作用

さらに最近は、人間での臨床試験も実施されるようになりました。米国では進行乳がん患者に対する半枝蓮の効果が検討され、有効性を示唆する結果が得られています。臨床試験で証明された半枝蓮の抗がん作用について紹介します。
まず、以下の内容は、
Time誌10月15日号に掲載された記事の日本語訳です(一部は抜粋)。

タイトル:古来の薬草が癌を治療できるか? (Can Ancient Herbs Treat Cancer?) 原文はこちらへ
中国の薬草の半枝蓮(はんしれん, Ban Zhi Lian)を知らない人は多いが、BZL101第2相臨床試験に参加している80人のステージ4の転移を有する乳癌患者にとっては希望と命の元となっている。
半枝蓮の臨床試験(BZL101)を実施しているカリフォルニア州のエマリービレ(Emeryville)にある医薬品開発会社のBionovo社にとっても、それは希望に満ちたものである。
「この臨床試験は、中国医学で使用されている薬草の抗がん作用を検討する臨床試験としては、FDA(米国食品医薬品局)が承認した最初のものです。」と、Boinovo社創設者の1人であり、鍼灸師で乳癌サバイバーでもあるTagliaferri博士は語る。
「62%の抗癌剤が天然物から開発され、植物由来の医薬品はたくさんあります。したがって、この植物が抗癌剤になることも不思議ではありません」
半枝蓮は中国医学では古くから腫れ、痛み、発熱の薬として用いられてきた。この半枝蓮に対するTagliaferri博士の興味は、1996年に鍼灸師であり後にBionovo社の共同創設者となったIsaac Cohen氏の経験がきっかけになった。
その当時、Cohen氏は、乳がんの標準治療で苦しんでいる患者や、効果がある治療法が無くなった乳がん患者を10年あまり治療していた。
「癌治療に疲れ果て、絶望した乳癌患者は、もっと体に優しい代替治療を求めていました。」Cohen氏は、抗がん剤やホルモン療法の副作用を緩和するために、薬草(ハーブ)の煎じ薬を処方してきた。
しかし,患者の主治医のがん専門医は、患者が代替医療を試すのを妨げ、「中国医学(漢方薬)はインチキで、効果があるという証拠はどこにも無い」と言っている。しかし、それでもCohen氏は、
半枝蓮を含む漢方薬を処方した乳がん患者の多くが漢方治療に良く反応し,比較的良好なQOL(生活の質)を維持することを見てきた
「初めはたまたまだと思いました。しかし、そのうちにこれは偶然ではないと思い始めたのです。」
このような半枝蓮の臨床効果に関するCohen氏の観察を元に、1996年には、Cohen と Tagliaferriは、当時カリフォルニア大学サンフランシスコ校の乳がん専門医であったTripathy博士と一緒に、半枝蓮の抗がん作用に関するエビデンスを蓄えていった。
乳がんの培養細胞や動物を使った実験で、
BZL101が乳がん細胞にアポトーシスを誘導する作用が認められ、FDAに臨床試験の開始を認めさせるに至った。
第1相試験は、抗がん剤治療やホルモン療法などの標準治療を平均4回以上受けたにもかかわらずがんが進行していった21人のステージ4の乳癌患者において行われた。1日の12グラムの半枝蓮を1年間服用したところ、25%の患者で90日間、19%の患者で180日間の病勢安定(がんの進行の停止)が認められた。
半枝蓮(BZL101)は、癌細胞にとって85%ものエネルギー産生源であるグリコーゲンの分解プロセスである解糖系を阻害し、がん細胞をエネルギー不足に追い込むことによってがん細胞を殺すという作用機序が示唆されている。
2002年には、Tagliaferri と Cohenは大学を去り、Bionovo社を設立した。
2006年4月には第2相臨床試験が、シカゴ大学、デューク大学、M.D.アンダーソンがんセンター含め、10施設で開始された。この第2相試験は2008年初頭に終了予定である。
抗がん剤や放射線治療の副作用の緩和や、免疫力の増強、そしてさらに治癒を期待して、多くの乳がん患者が漢方治療を受けている。
ある患者には漢方治療が役に立ったかもしれないが,効果がみられなかった患者もいる。
患者、薬草の品質や効能、処方内容、処方医の経験などのばらつきが大きいため、簡単な試験で得られた結果では確実なことは言えない。したがって、臨床試験で漢方薬の効果を評価することは極めて困難である。
「多くの人は漢方治療に興味を持ち利用しているが、漢方薬は複数の成分の混合物であるから、研究は困難である」と、現在はテキサス大学の内科教授になったTripathy医師は言う。
実験室での研究では、研究者は漢方薬から特定の分子や化合物を分離しようとしばしば試みてきたが、そうすると、抗癌作用が消失してしまうのだ。「漢方薬には、成分である多くの物質の相乗効果によって抗がん作用を発揮するものがある。」とTripathy医師は言う。
Bionovo社のような会社は、個人や製薬企業からの研究資金を獲得するのに苦労している。
「しっかりした臨床試験の結果が無ければ、効果があるという証拠が無いと言って、人々はその治療を疑うのです」と彼は言う。2009年に第3相試験を開始する予定のBionovo社は、このような考えに反論できることを期待している。そして、Bionovo社は、半枝蓮以外にも抗がん作用をもった20以上の薬草の研究を行っている。
FDAは、がんの薬草治療の研究に対して、少なくとも熱意を持ってみているという。「われわれは、漢方薬に対して反対するものではありません。試験結果がわれわれの基準に見合うかどうかを評価するのです。」とFDAの植物調査部門のリーダーのChen博士は言う。
植物成分の薬理活性を研究することも、また薬草の品質の同一性を確保することも困難であることは、Chen博士も十分理解している。しかし、Bionovo社の努力がうまく行けば,他の研究にも道が開けてくる。「漢方薬を元にした抗がん剤が認められれば、製薬業界も新たな発展が期待できる。製薬業界は初の漢方薬のサクセスストーリーを注目している。」とChen博士は述べる。

(追記1)この記事の元になったのが次の論文です。

Phase I trial and antitumor effects of BZL101 for patients with advanced breast cancer.(進行した乳がん患者に対するBZL101の第1相試験と抗腫瘍効果)Breast Cancer Res Treat. 105(1):17-28, 2007
(要旨)植物治療はしばしば乳がん患者に利用されている。しかし、それらの安全性や有効性を検討した臨床試験はほとんど行われていない。
Scutellaria barbataは、全草を乾燥させたものが漢方薬の半枝蓮(ハンシレン)として知られている。その熱水抽出物からなるBZL101の安全性と有効性を評価する第1相臨床試験を、進行乳がん患者を対象として実施した。
この第1相試験に参加したのは、
抗がん剤などでの治療歴がある、転移を有するステージ4の進行乳がん患者21人で、平均年齢は54歳(30〜77歳)であった。患者は半枝蓮の熱水抽出エキスを1日350mL服用した。それ以外の抗癌剤は使用せず、病気の進行または毒性が見られるか、患者が希望した場合にのみ投与を中止した。
この試験では、グレード3または4の有害事象はみられなかった。
グレード1または2の有害事象として多かったのは、吐き気(38%)、下痢(24%)、頭痛(19%)、鼓腸(14%)、嘔吐(10%)、便秘(10%)、倦怠感(10%)などであった
16人について反応が評価でき、
4人(25%)は90日を超えて病態安定(stable disease)、3人(19%)は180日を超えて病態安定と判断された5人の患者は客観的な腫瘍の縮小(objective tumor regression)がみられた、1人は部分奏効(partial response)と判断された
培養細胞を用いた研究では、BZL101は乳がん細胞にアポトーシスを誘導することが示されている。さらに、この第1相試験で、BZL101の毒性は低く、治療歴のある進行乳がんに対しても、臨床的な抗腫瘍効果を発揮することが示された。

(追記2)半枝蓮の抗腫瘍作用のメカニズムに関して、以下のような研究結果が報告されています。

Molecular mechanisms underlying selective cytotoxic activity of BZL101, an extract of Scutellaria barbata, towards breast cancer cells.(乳がん細胞に対する半枝蓮抽出エキスBZL101の選択的細胞毒性活性の分子メカニズム)Cancer Biol Ther. 2008 Jan 7;7(4) [Epub ahead of print]
BZL101は乳がん細胞を殺すが正常の乳腺細胞には傷害作用を示さない。
正常細胞は、エネルギー産生に主にクエン酸回路(クレブス回路)を用いるが、癌細胞はこれとは異なり、解糖系を経て生産されるエネルギーに多くを依存している。
BZL101は解糖系を阻害し、癌細胞をエネルギー不足に追い込む。これにより癌細胞には細胞死が起こるが、正常細胞はほとんどダメージを受けない

(追記3)

タイム誌の記事では、半枝蓮を1日12グラム服用と記載されていますが、これは薬草を12グラムという意味でなく、抽出エキスの成分量が12グラムで、生の薬草の量としては1日に180グラムとなっています。
この臨床試験で使用された半枝蓮のエキスの調整法は以下のようです。
1)180グラムの生の薬草を微細なパウダーに粉砕する
2)この粉末を1800mlの蒸留水と混ぜる
3)70〜72℃に温めて60分間置く
4)抽出した液を取り、上澄みのカスは168グラムであった(つまり、薬草に含まれる成分の12グラムが抽出エキスに移行していると考えている)。
5)抽出液は1750mlになり、これを真空蒸発器で5倍に濃縮し、350mlとした。

つまり、この臨床試験で
1日に服用した350mlの半枝蓮抽出液というのは、180グラムの生の半枝蓮から抽出した12グラムの成分が含まれるということになります
漢方薬の調整では、通常沸騰させて煎じますが、この試験では70〜72℃で抽出しています。
100℃では分解したり蒸発する活性成分の存在を想定しているのかもしれません。
通常の流通している半枝蓮は乾燥したものですので、乾燥重量では180グラムの半分くらいに相当すると思います。
中国でのがんの治療には半枝蓮は30〜60グラムくらいを使用しています。
この臨床試験の結果から、
乾燥した半枝蓮を1日60〜120グラムくらい使った煎じ薬を毎日服用すると抗腫瘍効果が期待できそうです。
この臨床試験では、半枝蓮の煎じ液を多く服用すると吐き気などの消化器症状の副作用が出ています。
半枝蓮を単独で服用するのでなく、胃腸機能を保護するような生姜(しょうきょう)や陳皮(ちんぴ)、甘草(かんぞう)などを少し加えると副作用が緩和できるかもしれません

健常人でも、食事から野菜を1日に生重量で350グラム以上摂取することが推奨されています。半枝蓮も野菜と同じようなものですので、生で180グラム(乾燥重量で90グラム程度)を毎日摂取するのは、努力すれば困難ではありません。
野菜のニンジンをジュースにして大量に摂取するがんの食事療法がありますが、ニンジンジュースの代わりに、半枝蓮の絞り汁を服用する方が効果が期待できるかもしれません。

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