フラボノイドは大腸がんの再発を予防する

・フラボノイドとは:

フラボノイドとは、植物に含まれる色素成分の総称で、その種類は数千種類知られています。
花をいろどる色素がフラボノイドであり、クリーム色から黄色の花ではフラボノールフラボンと呼ばれるグループが、赤色から赤紫色や青色の花ではアントシアニンと呼ばれるグループが関与しています。
野菜や果実や茶などの渋みや苦みはフラボノイドによることが多く、柑橘類の苦みはフラバノンというグループ、茶の渋みはカテキンと呼ばれるグループが関与しています。大豆に含まれるイソフラボンもフラボノイドの一種です。

昔は、食品に含まれるフラボノイドは栄養学的に評価されることは無く、むしろ消化酵素を阻害する可能性があることから,不要な成分として扱われてきました。また、食品の渋みや苦みの原因になっているため、フラボノイドの多い植物は食材として敬遠されがちでした。しかし、最近になって、フラボノイドが多様な生理活性機能を示すことが次々に明らかになり、食品成分の中でも最も注目される成分の1つになっています。

フラボノイドには抗菌性を示すものが多く、植物はこの成分によって病原性微生物などの侵入を阻害するものと推測されています。また、植物を紫外線から守る役割を果たしており、そのため強い抗酸化作用をもっています。
したがって、人体にフラボノイドを利用する場合、抗菌作用や抗酸化作用が期待できることは十分に納得できます。天然の抗菌剤や抗酸化剤として利用できます。
さらに、抗炎症作用、発がん抑制効果、がん細胞の増殖抑制作用、血管新生阻害作用、抗変異原作用、がん予防作用などの様々な抗がん作用が知られています

漢方薬に使われる生薬にも、多くのフラボノイドが含まれており、薬効との関連が研究されています。漢方薬の抗がん作用も、フラボノイドの関与が大きいと考えられています。
フラボノイドが大腸がんの手術後の再発予防に有効であることを示す臨床試験の結果が、最近報告されていますので、この論文を紹介します。

Prospective cohort comparison of flavonoid treatment in patients with resected colorectal cancer to prevent recurrence結腸直腸がんの切除手術後の患者におけるフラボノイドの再発予防効果に関する前向きコホート研究World J Gastroenterol 14: 2187-2193, 2008

結腸直腸がんや大腸腺腫の切除手術を受けた患者に対して、フラボノイドの摂取に再発予防効果があるかどうかを、前向きコホート研究で検討したドイツで実施された臨床試験です。
この研究では、大腸がん切除後36人と、大腸腺腫でポリープ切除を受けた51人の計87人の患者を対象し、1つのグループ(31人)にはフラボノイドを混合したサプリメント(20mgのアピゲニンと20mgのエピガロカテキンガレート)を与え、定期的に大腸内視鏡や聞き取り調査(食事の内容や生活習慣について)を行い3〜4年間追跡調査を行い、性別、年齢、腫瘍の種類などをマッチさせた対象グループ(56人)と再発率について比較しています。

その結果、大腸がん切除後でフラボノイドの投与を受けた14人では、がんの再発は0で、腺腫の発生が1例に認められました。一方、対象群では大腸がん切除後の患者15例中3例(20%)にがんが再発し、4例(27%)に腺腫の発生が認められました。
つまり、腫瘍の再発率はフアボノイド投与群が7%(15例中1例)であったのに対して、フラボノイドの投与を受けていない対象群では47%(15例中7例)で、統計的に有意な差(p=0.027)が認められました

以上のことから、大腸がんの切除手術後にフラボノイドを長期にわたって多く摂取することは、がんの再発や新たな腫瘍の発生を予防する効果があるが示唆されました


・食品や生薬・薬草による大腸がんの再発予防について:

大腸がんは早期に手術すれば、ほとんど治ります。しかし、腫瘍が大きかったり、リンパ節転移が見つかった場合には、治癒切除と判断されても、5年以内に40〜50%の率で再発します。
大腸の良性腫瘍である腺腫でも、ポリープ切除をしたあとに、他の場所に新たな腺腫が発生することが多くあります。

このような大腸腺腫や大腸がんの再発を予防するための食事やサプリメントの研究が行われていますが、どのような食事や食品成分が有効なのかはまだ十分に明らかにはなっていません。

たとえば、食物繊維の豊富な食事が再発予防効果があるという報告がある一方、それを否定する研究もあります。穀物や野菜や果物の豊富な食事ががんの予防に有効なことは良く知られていますが、このような食事でも大腸がんや大腸ポリープの再発予防には効果が見られなかったという研究結果もあります。
葉酸、カルシウム、ビタミンDやセレニウムの効果を指摘する報告もありますが、コンセンサスが得られるほど十分な証拠はまだありません。
抗酸化性のビタミン(ビタミンCやEやβカロテン、CoQ10など)が消化器系のがんを予防するという証拠はありません。
アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症剤が、大腸がんやポリープの再発予防に有効であるという証拠は多く報告されていますが、副作用の観点から、再発予防の目的で長期に使用することには限界があります。

植物に含まれるフラボノイド、インドール、イソチオシアン酸、グルコシアノレート、レスベラトロール、クルクミン、サポニン、テルペンなど多くの成分が、がんの発生予防や再発予防の観点から効果が検討されています

フラボノイドには抗がん作用、細胞増殖の抑制、抗変異原性、抗酸化作用などが多くの研究で明らかになっています。動物実験のレベルでは大腸がんをはじめ多くのがんの発生を予防する効果も多く報告されています。
フラボノイドの一種のケルセチンクルクミンを一緒に摂取すると、家族性大腸腺腫症の患者の腺腫の発生や再発を予防する効果があることが報告されています。

上記に紹介したドイツで行われた臨床試験では、アピゲニンエピガロカテキンガレートという2種類のフラボノイドの混合物を使って、大腸がんと大腸ポリープの切除後の再発に及ぼす効果を検討しています。
アピゲニンはセロリやパセリなどの野菜やカモミールなどのハーブに含まれるフラボノイドの一種です。エピガロカテキンガレートはお茶に多く含まれるカテキンという種類のフラボノイドです。
その結果、このようなフラボノイドミックスを1日40mg摂取すると、大腸がんや大腸腺腫の再発を防ぐ効果があることが示されました。

1杯のお茶には100mgのカテキンが含まれており、その半分はエピガロカテキンガレートですので、お茶を毎日数杯飲むだけでも大腸がんの再発予防効果が期待できるかもしれません。

漢方薬に使われる生薬はフラボノイドの宝庫です。漢方薬の抗がん作用にもフラボノイドが関与しています。
フラボノイドは苦みの原因になるので、抗がん作用を強化した漢方薬はどうしても苦みが強くなります。
「良薬は口に苦し」と言いますが、苦い漢方薬ほど、フラボノイドが多く含まれて抗がん作用が強いということになるかもしれません。

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